
虫歯治療で使用される麻酔の種類や特徴
虫歯治療で使用される麻酔の種類や特徴について阿倍野区西田辺えがしら歯科が解説します。
皆さんは、歯科治療を敬遠する理由として「痛み」が大部分を占めると思います。
しかし、歯を削る時の痛みはとても耐えがたいものがあります。なので歯の麻酔は非常に重要となります。
私たち歯医者が使う麻酔液は数種類あり効果の特徴が異なります。全身疾患など他の病院で治療を受けて薬を飲んでいるようであれば、麻酔液との相性もあり、注意が必要です。
今回は虫歯治療で使用される麻酔の種類や特徴について詳しく解説します。
目次
1.虫歯治療に麻酔は必要か?
結論から言うと、「痛みが出る可能性が高い処置」では麻酔が有効です。
麻酔を使うことで、歯を削る間の痛みや不快感を抑え、落ち着いて治療を受けられます。
局所麻酔は、治療する歯やその周りだけに効くお薬で、数分で効き始め、処置中しっかり痛みを抑えることを目的に使います。
必要に応じて表面麻酔(歯ぐきに塗る)→注射による局所麻酔の順で行います。
一方で、ごく浅い虫歯や、削る量がわずかな場合は、患者さんと相談のうえ「麻酔を使わない」選択をすることもあります。
痛みの感じ方や歯の場所、炎症の有無などを診て、担当医が安全に配慮して判断します。
2.どのくらいの虫歯の大きさなら必要か?
日本では、虫歯の進行をC0〜C4で表します。
- C1(エナメル質内):痛みはほとんど出ません。状況により経過観察や最小限の処置で済むことがあり、麻酔なしで対応できる場面もあります。
- C2(象牙質まで進行):冷たい物がしみるなど神経に近づくため、削る時の痛みを避ける目的で局所麻酔を使うことが一般的です。
- C3(神経に達する)
- C4(歯冠崩壊):根管治療や抜歯を含む処置が必要になり、多くの場合で確実な麻酔管理が求められます。
※上記はめやすで、痛みの感じ方には個人差があり、下顎奥歯(骨が硬い)など部位差でも麻酔の必要性が変わります。
3.虫歯治療に使用する麻酔薬の種類と、効果・効果時間などの特徴
歯医者の局所麻酔薬は、いずれも神経の電気信号を一時的に止めるはたらきをします。代表的な種類と特徴を、できるだけやさしく整理します。
3-1 表面麻酔(塗るタイプ)
- 成分例:ベンゾカイン20%ジェル、リドカイン製剤 など
- 用途:注射のチクッとする痛みを減らすため、歯茎に数分塗布してから局所麻酔を行います。
- 補足:国内でも歯科用ベンゾカイン/リドカイン製剤が承認・流通しています。
3-2 リドカイン+エピネフリン(アドレナリン)製剤(注射)
- 最も標準的に使われる組み合わせ。エピネフリン(血管収縮薬)を加えることで、麻酔の効きが安定し、持続が延長します。エピネフリン(アドレナリン)が含まれると血管収縮作用があるのでリドカインの分解が遅れるので1-2時間程度の効果持続。また止血効果も高い。血圧上昇の危険性あり。
- 用法の目安(添付文書):成人で0.3〜1.8 mL を部位に応じて使用(歯科用カートリッジ)。
- ポイント:エピネフリン添加により「効果の持続が長くなる」という薬理学的特徴が確認されています。
3-3 メピバカイン(血管収縮薬“なし”が基本)
- 販売名:スキャンドネスト
- 特徴:エピネフリンを含まないため、止血効果や持続はやや短めですが、血管収縮薬を避けたい状況で選択されます。血圧上昇はなし。
- 効果時間の目安:添付文書上、浸潤麻酔は30分以内の処置に適用(作用時間は血管収縮薬入りより短い)。
3-4 プロピトカイン(プリロカイン)+フェリプレシン
- 特徴:エピネフリンの代わりにフェリプレシンを配合したタイプ。循環器系への刺激を抑えつつ止血を補います。
- 注意:メトヘモグロビン血症(血液が酸素を運びにくくなる)への注意喚起が添付文書にあります。適応や用量は医師が慎重に判断します。
3-5 アルチカイン+エピネフリン(2025年 国内販売開始)
- 特徴:海外で広く使われる局所麻酔薬。代謝が速く、毒性が比較的低いとされ、日本でも「セプトカイン®配合注カートリッジ」として承認・発売されました(1カートリッジ1.7 mL)。選択肢が増え、症例に応じた使い分けが可能に。
※具体的な「○分効く」の数値は、術式・部位・投与量・個人差で変わります。
当院では麻酔の効き具合の確認を行いながら適量を追加し、痛みのない状態を保つよう管理しています。
4.虫歯治療時における麻酔薬のリスクや副作用
局所麻酔は歯科で日常的に使われる安全性の高い医薬品ですが、ゼロリスクではありません。代表的なものを簡潔にまとめます。
- 全身的な反応(まれ):ふらつき、耳鳴り、しびれ感、けいれんなどの局所麻酔中毒(LAST)。主に血管内に誤って入った場合や大量投与で起こりやすく、ゆっくり注入と吸引確認(血管内でないかの確認)で予防します。
- 循環器への影響(エピネフリン):一過性の動悸・手の震え・血圧上昇など。心血管疾患のある方は投与量を抑えるのが一般的です。高血圧症や心臓の疾患のある方は歯医者に必ず申告するようにしましょう。
- 局所の合併症:内出血、腫れ、神経への一時的な違和感、長くしびれる感じ(多くは時間で回復)。
- アレルギー:アレルギー性ショック(アナフィラキシーショック)は、きわめてまれですが起こり得ます。既往歴がある場合は必ず歯医者に申告してください。
- メトヘモグロビン血症:プリロカイン系やベンゾカインでまれに報告。既往やリスクのある方には使用を避ける・量を調整します。
5.リスクや副作用を回避しながら最大限の効果を得るには?
当院では、痛みを最小限に、安全性を最大化するために次の点を徹底しています。
- 事前問診と投与量設計
既往歴(高血圧・不整脈・甲状腺、喘息、妊娠/授乳、服用中の薬など)を丁寧に確認し、体重や全身状態に応じて安全域内で投与量を計算します。心血管疾患のある方では、エピネフリンは0.04 mg以内を目安に慎重投与します(1:100,000なら約2カートリッジが目安)。 - 痛みの少ない注射手技
表面麻酔→極細針→薬液を体温程度に温め→電動注射器でゆっくり注入。この順序で刺激を分散させます。注入前には毎回吸引して血管内への誤注入を避けます(LAST予防)。 - 薬剤の使い分け
- 止血や持続が必要:リドカイン+エピネフリン/アルチカインを第一候補に。
- 血管収縮薬を避けたい:メピバカインやプリロカイン+フェリプレシンを検討。
- 注射の痛み対策:表面麻酔を併用。
- 効きの確認と追加投与
処置中も「しみる」「痛い」が出ないかをこまめに声かけし、必要時は少量を追加。炎症が強い時は伝達麻酔へ切り替えるなど、手技を調整します。 - 術後の注意
麻酔が切れるまで頬や舌を噛まない、熱い飲食物に注意。まれな異常(強い動悸、広範な発疹、長引く感覚異常など)があればすぐにご連絡ください。
6.まとめ
- 虫歯治療で痛みが出る可能性が高い時は、局所麻酔が安全・確実に役立ちます。
- C1程度では麻酔なしで可能な場面もありますが、C2以上は麻酔を用いることが多く、C3以降では確実な麻酔管理が必須です。
- 代表的な麻酔薬は、リドカイン+エピネフリン、メピバカイン、プリロカイン+フェリプレシン、アルチカイン+エピネフリン。それぞれに持続時間・止血効果・安全性の違いがあり、患者さんの全身状態と処置内容に合わせて選択します。
- 心血管疾患などの既往がある方では、エピネフリン量の上限(0.04 mg目安)やゆっくり注入・吸引確認などの安全管理でリスクを抑えます。
当院(西田辺えがしら歯科)では、**「できるだけ痛くない」「安全で確実」**を最優先に、患者さんごとに最適な麻酔計画を立てています。ご不安やご希望(麻酔の量を控えめにしたい、効きが不安など)は遠慮なくお伝えください。
阿倍野区の西田辺の歯医者 西田辺えがしら歯科
IDIA国際口腔インプラント学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
歯科医師 院長 江頭伸行