歯周病を治療しないと、どうなる?
歯周病を治療しないと、どうなる?について阿倍野区西田辺の歯医者 西田辺えがしら歯科の歯の豆知識ページです。
私たちは、病気にかかっても身体に深刻な症状が現れない限り、放置する傾向があります。
頭痛や腹痛、腰痛などがあったとしても、とりあえず我慢して、仕事や勉強に専念するという方が多いですよね。
お口の病気でいうと、虫歯は神経まで侵されると眠れないほどの痛みを伴うことがあるため、仕方なく歯科を受診するケースも多いですが、強い症状が現れにくい歯周病となると、治療せずに放置していても日常生活に支障をきたさないため、歯科の受診を延ばしがちです。
今回はそんな歯周病を治療せずに放置し続けたらどうなるのか?を阿倍野区の歯医者、西田辺えがしら歯科が詳しく解説します。
目次
歯周病は自然に治る?
歯周病を治療しないで放置している人は、もしかしたら自然治癒を期待しているのかもしれません。
風邪やインフルエンザ、胃腸炎といった日常的にかかる病気は、医療機関を受診しなくても自然に治るものがほとんどだからです。
歯茎の腫れや出血以外に症状が見られない軽度の歯周病であれば、なおさら自然に治りそうなものですが、実際は歯周病は自然治癒することはありません。
前述した病気のように、短期間で高熱が出たり、強い痛みが生じたりすることはありませんが、歯周病は治療せずに放置することで着実に進行していきます。
歯周病と向き合う上では、まずその点を正しく理解しておく必要があります。
歯周病を治療せずに放置すると、どのように進行する?
◎歯周病は歯肉炎から始まる
歯周病は、歯肉炎と歯周炎の2つに大きく分けられます。
歯肉炎は、歯茎だけに炎症反応がとどまっている段階で、適切な治療を受ければ元の状態に戻せます。
これは歯周病を放置せず、早期に治療すべき理由のひとつです。
歯肉炎の段階で治療を始めれば、歯周病を比較的簡単に治せるだけでなく、歯茎を健全な状態まで戻せるからです。
◎歯周炎への移行
歯肉炎が歯周炎へと移行すると、元に戻すことができない不可逆的な変化が現れます。
それは歯茎と歯根膜、歯槽骨の吸収です。
これらが炎症反応によって破壊され、歯を支える力が弱まります。もちろん、歯周炎になってからでも治療する価値は十分あるのですが、健全な状態に戻せなくなる点は、知っておく必要があります。
ただし、歯周炎によって破壊された歯茎や歯槽骨は、歯周組織再生療法などを実施することで、ある程度までは回復可能です。
◎歯の喪失
歯周炎になっても治療を受けずに放置していると、歯がグラグラと動揺するようになり、やがては歯が抜け落ちます。
これが歯周病の末期症状ですが、この病気はそれだけで終わらないのが怖いところです。
歯周病を治療せずに放置して重症化させると、全身の病気を誘発することがあるからです。
歯周病によって誘発される全身の病気
歯周病は口腔内だけでなく、全身の健康に深刻な影響を及ぼすことが明らかになっています。
歯周病菌が血流を通じて全身に拡散し、炎症性物質を産生することで、以下のような多様な全身疾患を引き起こすメカニズムが確認されています。
主要な関連疾患
1. 糖尿病
歯周病と糖尿病は双方向の関係にあり、血糖コントロール不良が歯周病を悪化させる一方、歯周病菌が産生する炎症性サイトカインがインスリン抵抗性を高め糖尿病を悪化させます。
歯周病を治療することによりHbA1c値が0.5-1%改善する臨床データも報告されています。
2. 心血管疾患
歯周病菌は動脈硬化プラークから検出され、血管内皮細胞を損傷して血栓形成を促進します。
特に心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを2-3倍高めることが疫学研究で示されています。
3. 呼吸器疾患
口腔内で繁殖した歯周病菌を唾液や食物などと一緒に誤嚥することで、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という病気を引き起こすこともあります。
誤嚥性肺炎患者の肺から高頻度で歯周病菌が検出され、要介護高齢者の死亡原因第1位である肺炎との関連が指摘されています。
口腔ケア実施で肺炎発症率が40%減少したとの報告があります。
4. 妊娠合併症
歯周病菌が産生するプロスタグランジンE2が子宮収縮を誘発し、早産リスクを7.5倍、低体重児出産リスクを3.5倍高めます。
重度歯周病妊婦は正常妊婦に比べ早産率が4.28倍とのデータがあります。
妊婦さんが歯周病を放置して重症化させると、早産・低体重児出産のリスクが高まる点にも注意が必要です。
5. 認知機能障害
アルツハイマー型認知症患者の脳から歯周病菌の代表菌のポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)が検出され、炎症性サイトカインがアミロイドβ蓄積を促進する機序が解明されています。
歯の喪失本数と認知症発症率に相関が確認されています。
その他の関連疾患
1.骨粗鬆症
歯槽骨吸収が全身の骨密度低下を加速させ、特に閉経後女性で顕著に現れます。
2.関節炎・腎炎
歯周病菌の全身拡散により関節滑膜や腎臓で炎症反応が生じ、関節リウマチや糸球体腎炎の発症に関与します。
3.バージャー病
手足の末梢血管閉塞を特徴とするこの難病では、患者全員から歯周病菌が検出されています。
血栓形成促進作用が病態に関与します。
まとめ
今回は、歯周病を放置した場合に起こることについて、阿倍野区の歯医者、西田辺えがしら歯科が解説しました。
歯周病を治療せずに放置すると、かけがえのない天然歯を失うだけではなく、糖尿病や心血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞)、認知機能障害、呼吸器疾患、妊娠合併症などを発症するリスクが高まるため、十分な注意が必要です。
歯周病は感染症の一種ではありますが、風邪やインフルエンザとは異なり、自然治癒しないことも知っておいてください。
ですから、歯茎の腫れや出血が認められた時点で軽視はせず、できるだけ早く歯科を受診するようにしましょう。
阿倍野区の西田辺の歯医者 西田辺えがしら歯科
IDIA国際口腔インプラント学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
歯科医師 院長 江頭伸行
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