プロバイオティクスによる菌活と虫歯・歯周病予防
腸内環境を整え、体を健康へと導く「菌活」が近年ブームとなっています。
注目されているのがヨーグルト、「生きて腸に届く」のCMでも見ることがあるプロバイオティクスです。
いろんなメディアでも取り上げられている、このプロバイオティクスですが、実は虫歯や歯周病の予防、改善にも効果が最近の研究で分かってきました。
そこで今回はプロバイオティクスがお口の中にもたらす効果について、詳しくご紹介したいと思います。
目次
1. プロバイオティクス=体に良い効果をもたらす菌
「プロバイオティクス」という言葉だけを聞くと何だか難しい学術用語と思われがちですが、実は私たち日本人には非常に馴染み深いものです。
例えば味噌や醤油、納豆、ぬか漬けといった発酵食品は、古い時代から健康食として愛されてきました。
これらの発酵食品がなぜ健康によいのか。それは発酵食品の中には体に役立つ多くの菌が存在し、それらの菌が腸に届いて様々な良い効果をもたらしてくれるからです。
味噌や納豆などに含まれる、この「体に役立つ菌」こそプロバイオティクスです。
ではこのプロバイオティクスが私たちの体で具体的にどのような働きをしてくれるのか、次に詳しくみていきましょう。
2. 腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑える
プロバイオティクスの働きを簡単に説明すると、「体に良い菌を増やし、体に悪い菌の増殖を防いで免疫力を高める」ということになります。
私たちの皮膚やお口の中、鼻、喉、腸内には無数の菌が生息しています。
皮膚には1兆個以上もの、腸内にいたっては100兆個以上もの菌が生きているといわれ、私たちと共存しているのです。
これらの菌は「常在菌(じょうざいきん)」と呼ばれいて
3つの種類に分けられます。
☆善玉菌:腸の調子を整える・免疫力を高める菌
☆悪玉菌:体に害を与える・免疫力を下げる菌
☆日和見菌(ひよりみきん):善玉菌・悪玉菌のどちらの影響も受けやすい菌
普段体の調子の良い時は、これら3種類の菌がその数を一定に保ちながらバランスよく生息しています。
しかしストレスや疲労が溜まったり、生活習慣が乱れたりすると悪玉菌が精力的に動きだし、さらにその影響を受けて日和見菌の「悪玉化」がはじまります。
そして腸で悪玉菌が活発になった結果、免疫力が低下して風邪やインフルエンザ、虫歯、歯周病、ニキビなどの様々な感染症を引き起こしてしまうのです。
プロバイオティクスにはこのような腸内環境を改善し、腸内の菌のバランスを善玉菌有意にする働きがあります。
さらにプロバイオティクスによって善玉菌が動きが活発になると、今度は日和見菌が「善玉化」して悪玉菌の増殖を抑えてくれるわけです。
3. プロバイオティクスは「虫歯」「歯周病」にも良い効果が
プロバイオティクスは腸内環境についてマスコミでもよく取り上げられるのですが、実はお口の中の環境の正常化にも非常に効果があります。
先ほど「腸内には100兆個もの菌が生息する」というお話をしましたが、体の中で次に菌が多いのがお口の中です。
歯をよく磨く人で1000億個、あまり磨かない人だと4000~6000億個の菌がお口の中に住みついています。
この無数の菌の中に、虫歯菌や歯周病菌は「日和見菌」として生息しています。
日和見菌といえば、善玉菌と悪玉菌の両方から影響を受けやすい菌。
そこでお口の中もプロバイオティクスで善玉菌を多く定着させれば、虫歯菌や歯周病菌の「悪玉化」を防ぐことができるわけです。
私たちの免疫力とも無縁ではありません。
プロバイオティクスで腸内環境が改善され、体の免疫力が高まることは、おのずと虫歯や歯周病の予防へとつながります。
このようにプロバイオティクスがお口の中、腸の中の両方から作用することで、虫歯や歯周病を効果的に予防、改善することができます。
〇お口のプロバイオティクスは、下記のように働きます。
- 抗菌物質を出して虫歯菌・歯周病菌の力をそぎます。
- 虫歯菌の集まりに紛れ込み、虫歯菌が連携して悪さをするのを邪魔します。
- 虫歯菌・歯周病菌と縄張り争いをして、歯への定着を邪魔します。
- 栄養を取り合って虫歯菌・歯周病菌のパワーを弱めます。
- 歯茎の免疫力アップさせる
4. 腸には腸のバイオティクス、お口にはお口のバイオティクスがある
プロバイオティクスで近年人気を集めているのがヨーグルトです。ビフィズス菌やガセリ菌、R1乳酸菌など、様々な種類のプロバイオティクスヨーグルトが市場で販売されています。
プロバイオティクスは腸内での定着が難しく、1、2回摂取しても1週間程度で排泄されてしまいます。
したがってプロバイオティクスは毎日取り続けることが重要で、その点においてヨーグルトは毎日手軽に摂取しやすいことが人気の理由となっています。
しかし注意しておきたいのは「普通のヨーグルトはお口のプロバイオティクスとして向いていない」ということ。
善玉菌を増やす目的で普通のヨーグルトを口に含み続けたり、砂糖入りのヨーグルトをダラダラ食べたりするなどしては、かえって虫歯のリスクを高めてしまいます。
普通のヨーグルトは、あくまで腸内環境をターゲットにしたもので、お口の中の環境改善には向いていません。
お口のバイオティクスには、お口の中に良い作用をもたらすものを選ぶ必要があります。
5. 虫歯菌・歯周病菌の殺菌効果のある「8020ヨーグルト」とは
お口に良い効果をもたらすプロバイオティクスのヨーグルトをご紹介します。
広島大学大学院医歯薬保健学研究院 二川浩樹 教授によって発見された菌「ラムノーザス菌L8020株(L8020菌(またはL8020乳酸菌))」を用いた「8020ヨーグルト」「8020のむヨーグルト」です。
「8020」とは、80歳になっても自分の歯を20本以上保ってほしいという思いを込めて「8020ヨーグルト」と名付けられています。
「L8020菌」は、虫歯菌・歯周病菌・カンジダ菌の発育を阻止する、殺菌効果のある乳酸菌の一種です。
教授によると、ヒトの口(口腔内)から、虫歯菌と4種類の歯周病菌を効果的に減らすことをヒト試験にて明らかにしています。
この「8020ヨーグルト」には砂糖が入っていますが、ヒト試験でお口の中の虫歯菌や歯周病菌減ることが検証されています。
砂糖は、虫歯の原因菌(ミュータンスレンサ球菌)の栄養源でもありますが、この「8020ヨーグルト」のラムノーザス菌L8020株(L8020菌)の栄養源でもあります。
朝やお昼に歯磨きを行った後に、「8020ヨーグルト」を食べる方が良いとされています。
理由は、歯磨きによってバイオフィルム(プラーク)が壊されるので、ラムノーザス菌L8020株がよりいっそう作用しやすくなるからです。
ただ、夜の場合は「8020ヨーグルト」を食べた後は、歯磨きを必ず行うようにしてください。
1回にたくさん食べても、食べた量に比例して効果がアップするものではありませんので、毎日継続して食べることが良いでしょう。
他にお口のプロバイオティクスとしてお勧めなのは「L‐ロイテリ菌」と「TI2711(LS1)」です。
どちらもお口の中にとどまりやすいよう、ガムやトローチ、タブレット状になって販売されています。
もちろん虫歯に配慮したノンシュガーです。
「歯磨きを毎日しているのに、すぐに虫歯ができる」「歯周病が再発しやすい」「口臭を治したい」
このようなお悩みのある方は、ぜひプロバイオティクスを普段のケアに取り入れてみましょう。
5.プロバイオティクスの利点
現代、抗生物質という薬ができて、病気などの細菌感染症を患ったとき当然、抗生物質を服用します。
しかしその結果、抗生物質の使い過ぎによる耐性菌の問題が指摘され、近年、抗生物質の使用を減らすかが重要なテーマになってきています。
また、細菌感染によって病気が発症してから対処するのではなく、普段から細菌と共存し、細菌の力を借りながら健康を増進し病気を予防するかということも重要なテーマにもなってきています。
私達は常にいろいろな細菌と共に生存しています。
共存しなければ生きてはいけません。
この細菌たちと一緒に健康増進するために、一度、お口のプロバイオティクスをお試しください。
このプロバイオティクスは摂取制限も副作用もありません。
特に就寝前に使用すると朝、違いを実感できるでしょう。