サイナースリフトとは (画像あり)
インプラント治療を成功させ、さらに長期的に良好な状態を維持するためには、インプラント周囲の歯槽骨(歯ぐきの骨)に十分な厚みが必要となります。
しかし、すべてのケースにおいて必ずしもその歯槽骨が不足なく残っているとは限らず、またお口の内には解剖学的にもともと歯槽骨が薄い部位も存在しています。このように歯槽骨の量が少なく、インプラントの維持が十分に得られないと予想されるケースでは、インプラント手術の前に歯槽骨を増量するための補助手術が必要です。
サイナースリフトもこの補助手術の1つで、主に上顎の奥歯のインプラント治療で適応されます。
1. サイナースリフトとは
サイナースリフトは上顎洞挙上術とも呼ばれる骨造成手術の1つで、主に上顎の奥歯のインプラント治療において用いられる術式です。
私たちの頭蓋骨には副鼻腔(サイナス)と呼ばれる4つの空洞が存在しています。
ダイビングの経験がある方であれば「サイナススクイーズ(副鼻腔痛)」という言葉をご存知の方も多いでしょう。
サイナススクイーズでおこる眉間やこめかみ、鼻の奥の痛みは、深い場所に潜った時に副鼻腔(サイナス)内の空気が抜きれないことが原因で起こります。
つまりサイナススクイーズが起こる場所に、副鼻腔という空洞が存在しているわけです。
4つある副鼻腔のうち、歯科領域に深く関係するのが上顎洞と呼ばれる空洞です。
上顎洞はちょうど鼻の横の頬のあたりに位置しており、その空洞によって上顎は奥歯になるほど骨の厚みが薄くなります。
特に大臼歯あたりでは歯根と上顎洞とが近接するケースもめずらしくありません。
さらに上顎の歯槽骨は下顎の歯槽骨と比べて柔らかいため歯周病による骨吸収も進みやすく、抜歯後にインプラント治療を行なうにも歯槽骨の厚みが足りないことがよくあります。
このような場合に上顎洞の底の部分を持ち上げて、空いたスペースに人工骨を補って歯槽骨に厚みを持たせるのがサイナースリフトという骨造成手術です。
2. サイナースリフトの術式
サイナースリフトの術式を簡単に説明すると、以下のようになります。
①麻酔を行い、歯槽骨を造成する部位の歯ぐきを開く
②上顎洞の側壁にあたる部分(奥歯の歯根部あたり)の骨を側方から一部取り除き、穴を空ける
③空いた穴に器具を入れ、上顎の歯槽骨と上顎洞の間にあるシュナイダー膜と呼ばれる膜を骨から引きはがす
④はがしたシュナイダー膜を引き上げ、膜と骨の間にできた隙間に骨補てん材(人工骨)を填入する
⑤吸収性のある人工膜(メンブレン)で②で開けた穴を覆う
サイナースリフトでは⑤の後にそのままインプラント埋入手術を同時に行う方法(1回法)と、いったん縫合して期間を置き、骨の造成が確認できた後にインプラント手術を行う方法(2回法)があります。
3. サイナースリフトとのソケットリフトの違い
サイナースリフトと同様に、上顎洞の底を挙げて歯槽骨の厚みを増やす方法にソケットリフトと呼ばれる術式があります。
どちらも歯槽骨を造成するメカニズムは同じですが、残量する骨の量によって適応がかわります。
サイナースリフトは歯が生えていた部位の側方からアプローチするのに対し、ソケットリフトは歯が生えていた部位から上顎洞にアプローチして骨を補てんします。
ソケットリフトは施術範囲が狭いため手術も短時間ですむほか、術後の痛みや腫れも少ない点がメリットですが、その分増やせる骨量は少なくなります。
そのため広範囲にわたり歯槽骨の量が少ないケースではソケットリフトを適応できません。
一方のサイナースリフトは施術範囲が広いため、術後に腫れや痛みが出やすいほか、技術的にも難しいというのが欠点といえます。
一方でサイナースリフトは一度に多くの骨を補てんすることが可能です。
インプラントの長さは小さいものでも8mmはあるため、最低でも10mmの上下的な歯槽骨の厚みが必要となります。
一般的に残っている歯槽骨の上下的な厚みが5mm以上のケースではソケットリフトが、上下的な厚みが5mm以下のケースではサイナースリフトが適応されます。
4. 最後に…
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