歯の麻酔について
歯科治療ではそのほとんどの治療で麻酔注射を行います。
一方で、多くの方が歯医者通いで治療時に最も苦痛に感じるのも麻酔注射ではないでしょうか。
麻酔注射が嫌がられる理由の1つが、具体的に注射を歯ぐきに刺す際の痛みです。
しかし、麻酔を効かせるのは歯であるはずなのに、なぜ実際に注射するのは歯ぐきなのか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、なぜ歯医者の麻酔は歯ぐきに注射をするのかという疑問にお答えし、さらに歯科治療で行う麻酔の種類やその特徴、当院で実践している「痛くない麻酔法」についても詳しくご紹介したいと思います。
目次
1. 歯には麻酔注射を直接打てない
歯医者で行う麻酔法は「局所麻酔」という、感覚を麻痺させる部位を限定して麻酔をかける方法です。
虫歯治療では治療をする歯の、その中にある歯髄(しずい)と呼ばれる歯の神経に麻酔を効かせます。
ただ、歯髄の周りは硬い象牙質やエナメル質で囲まれています。
そしてその歯自身も周囲を歯槽骨という歯を支える硬い骨に覆われているのです。
もし麻酔注射を歯に直接打つとしたら、麻酔をかける前に歯を削って歯髄に注射針を差し込むしか方法がありません。
しかし麻酔なしで歯を削れば当然ながら激痛を伴い、本来の麻酔注射の目的が失われます。
そこで歯医者の局所麻酔では、歯槽骨に麻酔薬を染みこませて麻酔を効かせたり、歯の神経の大元となる太い神経に麻酔を効かせるなどの方法で麻酔を行っています。
それでは実際に歯科治療で用いられる麻酔の特徴について、以下に詳しく解説していきましょう。
2. 麻酔注射を打つ前の麻酔 / 表面麻酔
表面麻酔は、歯ぐきに麻酔注射を打つ前に行う麻酔です。
歯医者の治療で最も嫌がられるのが麻酔注射を刺す痛みですが、表面麻酔はその注射針の痛みを和らげる働きがあります。
表面麻酔はその名の通り、歯ぐきの表面にしか麻酔の効果を作用させることができません。
ですのであくまで「麻酔注射の準備」と捉えておくと良いでしょう。
ただし麻酔注射をするほどの痛みを伴わない歯石の除去や、簡単な乳歯の抜歯などでは、表面麻酔のみで処置を行う場合もあります。
表面麻酔は、歯ぐきの表面に塗るジェルやクリームタイプ、麻酔薬を吹き付けるスプレータイプなどその種類は様々です。
また近年では、歯科用レーザーの麻酔効果を利用した表面麻酔を行う歯医者もあります。
3. 歯科治療で最も使用される麻酔注射 / 浸潤麻酔
先にもお話しした通り、麻酔注射は直接歯の神経に打つことができません。
そのため歯科治療では歯ぐきの中に麻酔薬を注入し、そこから歯槽骨(歯ぐきの骨)に薬液を浸透させていきます。
骨の中に染みこんだ麻酔液が血管に入り歯髄へ到達すると、歯の神経が麻痺して痛みを取り除くという仕組みです。
麻酔薬を歯の周囲から浸透させるこの麻酔法は浸潤麻酔(しんじゅんますい)と呼ばれ、歯科治療では頻繁に使用される方法です。
多くの患者様が苦手に感じる浸潤麻酔ですが、以前よりも針の太さが非常に細くなり、針を刺す痛みが軽減されています。
また、近年では電動麻酔器を導入する歯医者も増えています。
3-3. 電動注射器が良い理由
電動麻酔器のメリットは麻酔薬の注入スピードをコンピューター管理された機械の圧力で麻酔液を注入するため、ゆっくりと痛みが出ないように麻酔が注入できます。
また、電動の麻酔注射器は最も細い細い針を使用できるため、刺したときの痛みが非常に抑えられています。
(手打ちによる注射器で細過ぎる針の場合、ななかなか麻酔液が出でこず、長時間の握力が必要になるため不向きで使用しません。)
麻酔液の注入速度も数段階に変えることが出来、患者さまの状況や注射部位によって痛みの少ない速度で一定に注入できます。
また、カートリッジ式なので患者様ごとの使いきりになっていますので安心です。
まだまだ、電動注射器は高額なため歯科医院では普及率は低いのが現状です。
電動麻酔器は大きく歯医者にとっては使いづらいと、言う年配の先生は多いようです。