歯周病が全身に及ぼす影響
阿倍野区の西田辺えがしら歯科の歯周病が全身に及ぼす影響についての歯の豆知識ページです。
歯周病は歯を失う原因となるだけでなく、全身にさまざまな悪影響を及ぼす厄介な病気です。
歯茎が赤く腫れるのは、発症後に間もなく現れる症状であり、進行する過程でお口以外の部位にも多岐に渡る症状を引き起こします。
そこで今回は歯周病が全身に及ぼす影響について詳しく解説します。
目次
高齢の方は「誤嚥性肺炎」に要注意
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、食べ物や唾液などを食道ではなく気道へと飲み込んでしまう「誤嚥」によって引き起こされる肺炎です。
飲み込む力が衰える高齢の方に起こりやすく、歯周病を患っているとそのリスクが大きく上昇します。
なぜなら、食べ物や唾液に付着した歯周病菌が気管で細菌感染や炎症反応を引き起こすからです。
妊娠中の方は「早産・低体重児出産」に要注意
お口の中で繁殖した歯周病菌は、歯茎の血管の中に入って全身を巡るようになります。
妊娠中の方は歯周病菌や炎症性物質が子宮にまで到達することがあるため、十分な注意が必要です。
胎盤が形成された子宮で細菌感染や炎症反応が起こると、出産に関わる筋肉が収縮し、早産・低体重児出産を招くリスクが大きく上昇します。
また、妊娠中は「妊娠性歯肉炎」という歯周疾患にかかりやすくなる点もしっかり把握しておいてください。
歯周病菌が血管に入ることによる影響
歯周病菌が繁殖して歯茎の血管に入り込むと、妊娠中の方以外にも悪影響が及びます。
具体的には、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞といった血管に関する全身疾患です。
炎症反応が血管を硬くする
歯周病菌の侵入によって血管内に炎症が起こると、ある種の防御反応から血管が硬くなります。いわゆる動脈硬化はそれ自体で深刻な病態にまで発展することはありませんが、血管の柔軟性が減少することで血圧が上昇します。
血管の壁が狭くなる
動脈硬化に加えて、細菌などによって構成されるプラークが血管壁に沈着すると、血管が狭くなります。
そこに血の塊である血栓が詰まると脳梗塞や心筋梗塞を発症します。
インスリンの効果を弱める
歯周病菌が血管内に入ることで生じるサイトカイン(=炎症性物質)は、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの効果を減弱させることがわかっています。
ですから、歯周病の症状が悪化し、その状態が慢性化している人は食後の血糖値が下がりにくく、糖尿病のリスクが大きく上昇することになります。
糖尿病も歯周病のリスクが上昇させる?
上述したように、歯周病は糖尿病のリスク因子となっていますが、糖尿病になると歯周病にかかりやすくなることもわかっています。
これを専門的には「糖尿病と歯周病の負の相互関係」と呼んでおり、相乗効果によってそれぞれの病気の症状がどんどん悪くなっていくのです。
歯周病と認知症の関係
歯周病と関連のある全身の病気としては、「認知症」も忘れてはいけません。
認知症というのは、いろいろな要因によって脳の機能が弱まり、記憶力などに障害が現れる病気で、アルツハイマー型認知症が最も有名ですね。
「アミロイドベータ」と呼ばれる異常なタンパク質が脳に溜まることで脳細胞が死んでしまい、認知機能も低下していきます。
歯周病菌はそのアミロイドベータの脳への蓄積を早める作用があることが最近の研究で判明し、大きな反響を呼んでいます。
まとめ
今回は、歯周病がもたらす全身への影響について解説しました。
肺炎や脳梗塞、認知症など、一見すると歯周病とは何ら関係がない病気のように思えますが、実際はその関連が科学的に証明されています。
いずれも全身の健康やQOLを大きく害数する病気なので、可能な限り予防したいものです。
歯周病を予防することは、その第一歩となることでしょう。
阿倍野区 西田辺えがしら歯科
歯科医師 院長 江頭伸行