ソケットプリザベーションとは?抜歯後の骨を守り、インプラント治療に備える方法

虫歯や歯周病、歯の根の破折などによって、残念ながら歯を残せないことがあります。
そのようなとき、患者さんからよく聞かれるのが、「歯を抜いた後、骨はどうなるのですか」「将来インプラントを入れることはできますか」という質問です。
インプラント治療を考えている場合、歯を抜いた後の顎の骨をできるだけ良い状態に保つことがとても重要です。
歯を抜くと、その歯を支えていた骨は少しずつ幅と高さを失います。
骨が大きく減ると、インプラントを理想的な位置に埋入できなくなり、追加の骨造成の処置が必要になる場合があります。
そこで当院では、抜歯後の骨の減少を抑えるために「ソケットプリザベーション」という処置を行っています。
ソケットプリザベーションは、抜歯と同時に歯を抜いた後の穴に骨再生材料を入れ、将来のインプラント治療に必要な骨をできるだけ再生させる処置です。
今回は、ソケットプリザベーションの目的、実際の治療方法、当院で使用しているリフィット®デンタルとテルプラグ®について、一般の方にもわかりやすく解説します。
目次
ソケットプリザベーションとは
歯を抜くと、歯が入っていた部分に穴が残ります。この穴を歯科では「抜歯窩(ばっしか)」と呼びます。
英語では抜歯窩を「ソケット」、保存することを「プリザベーション」といいます。
日本語では「抜歯窩保存術」や「歯槽堤保存術」と呼ばれる処置です。
通常、歯を抜いた後の穴には血液がたまり、血餅と呼ばれる血のかたまりができます。
この血餅を土台として傷口が治り、時間をかけて内部に骨がつくられていきます。
ただ、歯を抜いた部分が元の形のまま回復するわけではありません。
歯を支えていた骨は、抜歯後から形が変わり始めます。
特に唇側や頬側にある骨は薄いため、内側へ吸収されやすく、顎の骨の幅が狭くなります。
ソケットプリザベーションでは、抜歯窩の内部をきれいにしたうえで骨再生材料を填入します。
骨がつくられるための足場を抜歯直後に整え、骨の幅と高さが大きく減るのを抑えます。
臨床研究でも、抜歯後にそのまま治癒させた場合と比べ、ソケットプリザベーションを行った方が、歯槽骨の幅や高さの変化を小さくできることが報告されています。
ただし、骨の吸収を完全に止める処置ではありません。抜歯後の骨の変化を小さくして、その後のインプラント治療を進めやすくすることが目的です。

抜歯後に骨が減ると、なぜ困るのでしょうか
インプラント治療では、顎の骨の中にチタン製のインプラント体を埋め込みます。
インプラントを長く安定させるためには、インプラント体の周囲に十分な骨で埋まることが必要です。
また、噛み合わせや見た目を考えた適切な位置と角度に埋入することも重要です。
抜歯後に骨の幅が狭くなると、インプラントを入れるスペースが不足します。
骨が不足したままでは、理想的な位置を避けてインプラントを入れざるを得なくなったり、治療自体が難しくなったりします。
そのため、骨が不足している部分には「GBR」と呼ばれる骨造成を行います。
GBRは骨が不足している部分に骨補填材やメンブレンと呼ばれる膜を使用し、新しい骨が形成される空間を確保する治療です。
骨の不足が小さい場合はインプラント埋入と同時にGBRを行います。
骨の欠損が大きい場合は、先に骨造成だけを行い、骨ができてからインプラントを埋入します。
抜歯時にソケットプリザベーションを行っておくと、抜歯後の骨の減少を抑えられるため、その後のインプラント治療を進めやすくなります。
前歯では、顎の骨の形が歯茎の高さや厚みにも影響します。
骨が大きく減ると歯茎がくぼみ、インプラントの被せ物を入れたときに歯が長く見えることもあります。
将来のインプラントを機能的にも見た目にも良い状態に仕上げるには、抜歯する時点から骨と歯茎の形を考えて治療することが大切です。
どのような方にソケットプリザベーションを行うのか
ソケットプリザベーションは、すべての抜歯に行う処置ではありません。
当院では、抜歯後にインプラント治療を予定している方、歯の外側の骨が薄い方、前歯など見た目への影響が大きい部分を抜歯する方、抜歯からインプラント埋入まで一定の治癒期間を置く方を中心に検討します。
まず、レントゲンやCTで歯の根の周囲にどの程度骨が残っているかを確認します。歯茎の厚み、感染の範囲、骨の欠損状態、インプラントを入れる予定の位置も調べます。
そのうえで、抜歯と同時にソケットプリザベーションを行うか、別の方法を選ぶかを判断します。
感染が広い場合や、抜歯窩を囲む骨が大きく失われている場合は、感染の除去を優先し、治療方法を変更します。
同じ「抜歯後にインプラントを入れたい」というご希望であっても、必要な治療は患者さんごとに異なります。
阿倍野区の西田辺の西田辺えがしら歯科では、抜歯前にその後の治療まで見据えて診断を行っています。

当院で使用するリフィット®デンタルとは
西田辺えがしら歯科ではソケットプリザベーションを行う際、抜歯窩の内部に「リフィット®デンタル」を使用します。
リフィット®デンタルの正式な販売名は「KM R-Fit インプラント」で京セラ・メディカルが製造しています。
リフィット®デンタルは、抜歯窩を含む歯科領域の骨欠損における骨再生や、インプラント埋入を前提とした骨再生を使用目的とする材料です。
の公式製品情報にも、ソケットプリザベーションをはじめとしたインプラント治療の骨補填に使用できることが記載されています。
リフィット®デンタルはどのような材料なのか
リフィット®デンタルは、低結晶性ハイドロキシアパタイトと、ブタ真皮由来Ⅰ型アテロコラーゲンからつくられています。
ハイドロキシアパタイトは、骨を構成する無機成分と近い性質を持つ材料です。
リフィット®デンタルでは、ハイドロキシアパタイトが約80%、コラーゲンが約20%の重量比で組み合わされています。
抜歯窩に填入されたリフィット®デンタルは、骨がつくられるための足場になります。
骨をつくる細胞などが材料の内部へ入り、骨のリモデリングに取り込まれながら骨組織へ置き換わっていきます。
「材料を入れれば、それがすぐに骨になる」というものではありません。治癒には時間が必要です。
治癒期間を置いた後にCTを撮影し、骨の幅、高さ、形、硬さを確認してからインプラントの治療計画を決定します。

当院で行うソケットプリザベーションの流れ
ソケットプリザベーションは、基本的に歯を抜く日と同じ日に行います。
最初に局所麻酔を行い、周囲の骨や歯茎への負担を抑えながら歯を抜きます。将来インプラントを入れる予定があるため、残っている骨をできるだけ傷つけないように丁寧に抜歯することが大切です。
歯を抜いた後は、抜歯窩の中に残っている炎症組織や感染組織を取り除き、十分に洗浄します。
次に、抜歯窩の骨壁や歯茎の状態を確認し、形を合わせたリフィット®デンタルを填入します。
その上部にテルプラグ®を置き、創面を保護するとともに、リフィット®デンタルの流出を防止します。材料が動かないよう、必要に応じて歯茎を縫合します。
テルプラグ®とは厚生労働大臣の承認を受けた国内承認医療機器で、コラーゲン使用吸収性局所止血材で抜歯した穴の保護材です。
処置後は、傷口の確認や消毒を行い、縫合した場合は後日抜糸します。その後も定期的に治癒状態を確認します。
骨ができるまでには一定の期間が必要です。インプラントを埋入する時期は、抜歯した場所、感染の状態、残っていた骨の量、治癒の進み方を見て決めます。
治癒後にはCTを撮影し、インプラントを埋入する位置や角度、使用するインプラントの長さや太さを決定します。
処置後に起こる症状とリスク
ソケットプリザベーションは外科処置です。通常の抜歯と同じように、処置後には痛み、腫れ、出血、内出血が生じます。
傷口が開く、感染する、使用した材料の一部が口の中に露出する、材料の一部が抜歯窩から出てくる、治癒に時間がかかるといった経過もあります。
リフィット®デンタルとテルプラグ®には動物由来のコラーゲンが含まれるため、アレルギーにも注意が必要です。
処置前には、アレルギー歴、アナフィラキシーの経験、持病、服用中の薬、喫煙習慣などを正確に歯科医師にお伝えください。
また、ソケットプリザベーションを行っても、骨の吸収を完全に止めることはできません。
治癒後に骨の幅が不足している場合は、インプラント埋入時にGBRを追加します。
ソケットプリザベーションは、インプラント治療の成功を保証する処置ではありません。
抜歯後の骨の変化を抑え、インプラントを入れやすい状態へ整えるための治療です。

治療後に気をつけていただきたいこと
処置後は、抜歯窩の中にリフィット®デンタル、その上部にテルプラグ®が入っています。
傷口を指や舌で触らないでください。材料が少し見えていても、ご自身で押し戻したり、引っ張ったり、取り除いたりしないでください。
当日は強いうがいを避け、飲酒、激しい運動、長時間の入浴を控えます。強くうがいをすると血餅が失われ、傷口の治癒を妨げます。
処置した側では硬いものを噛まず、歯ブラシも傷口へ直接当てないようにします。処方された薬は、歯科医師の指示どおりに服用してください。
喫煙は血流を悪くし、傷口と骨の治癒を妨げます。治療期間中は禁煙が基本です。出血が止まらない、日を追うごとに腫れや痛みが強くなる、膿が出る、材料が大きく外れたときは、早めに医院へご連絡ください。
ソケットプリザベーション後にGBRが必要になることもあります
ソケットプリザベーションを行った後でも、インプラント埋入時に骨の幅や高さが不足している場合はGBRを行います。ソケットプリザベーションとGBRは、どちらも骨に関係する処置ですが、目的と行う時期が異なります。
ソケットプリザベーションは、歯を抜いた直後に骨の減少を抑える処置です。一方、GBRは、インプラントを入れるために不足している骨を増やす処置です。
当院では、当院でソケットプリザベーションを行った部位に対して、インプラント埋入と同時に局所的なGBRが必要になった場合、所定の範囲内で追加の骨造成費用をいただかない治療契約を設けています。
骨の欠損が大きく、インプラントを入れる日とは別に骨造成を行う場合や、上顎洞底挙上術、広範囲の自家骨移植、歯肉移植が必要な場合は、別の治療計画となります。
治療内容と費用については、CT検査と診察の結果をもとに事前にご説明します。
抜歯をする前に、その後の治療まで考えましょう
ソケットプリザベーションは、歯を抜いた後の穴に骨再生材料を入れ、顎の骨の減少を抑える処置です。
将来インプラント治療を予定している方に対して、骨の幅と高さをできるだけ維持し、インプラントを適切な位置へ入れやすくする目的で行います。
西田辺えがしら歯科では、抜歯窩の内部に、厚生労働大臣の承認を受け、京セラ株式会社が販売するリフィット®デンタルを使用しています。
その上部には、創面の保護、止血、血餅の保持、食べ物の迷入防止、肉芽形成の促進、リフィット®デンタルの流出防止を目的としてテルプラグ®を使用します。
ソケットプリザベーションが必要かどうか?は、歯の状態、残っている骨の量、感染の範囲、歯茎の状態、その後に予定している治療によって決まります。
大阪市阿倍野区、西田辺周辺で、抜歯後のインプラント治療を考えている方、抜歯後の骨の減少が心配な方、ソケットプリザベーションについて詳しく知りたい方は、西田辺えがしら歯科へご相談ください。
現在の歯、顎の骨、歯茎の状態を確認し、抜歯後の治療まで含めてわかりやすくご説明します。
参考資料
厚生労働省 健康づくりサポートネット「速食いと肥満の関係―食べ物をよく『噛むこと』『噛めること』」
阿倍野区西田辺の歯医者 西田辺えがしら歯科
IDIA国際口腔インプラント学会 認定医
日本口腔インプラント学会 専修医
歯科医師 院長 江頭伸行


