歯周ポケットの測定方法と深さ別の治療法
歯と歯茎はくっついていると思われていますが、実は、歯の周囲には歯周ポケットと呼ばれる溝があります。
歯周病が進行すると、歯と歯茎が剥がれていき、歯周ポケットが深くなります。
歯周ポケットは正常な人でも1mm程度存在しているものです。
これが4mm以上になるといよいよ積極的な治療が必要となります。
今回はそんな歯周ポケットの測定方法と深さ別の治療方法についてわかりやすく解説します。
目次
歯周病の進行度を調べる「歯周組織検査」
歯周ポケットの測定は「歯周組織検査」の一環として行われます。
歯周組織検査では、以下の項目を調べます。
・歯周ポケットの深さ
・歯茎からの出血
・歯の動揺度
・プラークの付着状態
歯周ポケット検査
歯周ポケットの深さは「歯周プローブ」と呼ばれる専用の器具を使って測定します。
先端が細く、針のような形状をした器具をポケット内に挿入するのですが、調べる箇所によって1点法、4点法、6点法に分けられます。
1点法は、歯の周囲にプローブを挿入し、およそ一番深い場所を記録し5分程度で終わります。
4点歩は歯の周囲の頬側の近心(前より)・遠心(後ろより)、舌側頬側の近心(前より)・遠心(後ろより)の6か所を測定し記録し10分程度です。
6点法は頬側の近心(前より)・中央・遠心(後ろより)、舌側頬側の近心(前より)・中央・遠心(後ろより)の6か所を測定し記録し15分程度です。
当然ですが調べる箇所が増えるほど、歯の周囲全体なのか?部分的に歯周病が進行しているのか?など、より正確に歯周病の病態を評価できるようになります。
そして、これらどの測定方法をするかは、歯科医院ごとに違います
視診やレントゲン検査により、どの方法かを判断することが多いです。
【歯周ポケットの深さと重症度】
3mm以下 ⇒ 軽度の歯周病
4~5mm以上 ⇒ 中等度の歯周病
6mm以上 ⇒ 重度の歯周病
BOP(Bleeding On Probing):出血度指数
BOPとは、歯茎からの出血を調べる検査です。
「Bleeding On Probing」という名称からもわかるように、プローブで歯周ポケットの深さを測った際に調べることが可能です。
歯周プローブで歯周ポケットの深さを測った後、出血してくるか?を確認します。
歯周病菌の活動が活発だと歯茎の炎症反応が強く、腫れていて、プロービングの刺激で簡単に歯の周囲から出血します。
この検査ではどの歯がの出血したかの有無だけを調べます。
歯の動揺度検査
歯がグラグラと揺れ動かないかを調べる検査です。
歯科用ピンセットで歯をつまんだり、軽く押したりして動揺度を調べます。
歯周病によって歯茎や歯槽骨が破壊されると、歯の動揺度が高くなります。
動揺度には1~3まであります。
・動揺度1度…歯が前後に動く
・動揺度2度…前後、左右に動く
・動揺度3度…前後、左右に動く、押すと歯が沈む
ちなみに健全な歯でも多少は動揺度します。
歯の周囲には歯根膜という膜があり、歯根と歯槽骨(顎の骨)をつないでいます。
この歯根膜は約0.2mmほどあり、この歯根膜の範囲の動揺を生理的動揺といいます。
PCR(Plaque Control Record)
PCRとは、プラークの付着状態を調べる検査です。染め出し液を使って、磨き残しがある部位を調べます。
普段磨けていない部分を可視化できるので、患者さまもブラッシング法を改めやすくなります。
歯周病の治療法
軽度の歯周病
軽度の歯周病であれば、「歯周基本治療」で対応できます。具体的には、プラークコントロール、スケーリング(歯石除去)を行います。
中等度の歯周病
中等度の歯周病では、歯周ポケットが4~5mm程度まで深くなっています。これは歯周組織の破壊が進んでいることを意味しますが、原則としては「歯周基本治療」を対応します。
歯冠部の歯石を除去するスケーリングだけでなく、歯根面の歯石を除去するルートプレーニングも必要になり、これをSRP(スケーリング ルートプレーニング)と言います。
この段階では炎症反応が歯茎に加え、歯根膜や歯槽骨にまで広がっている点に注意しましょう。
重度の歯周病
歯周ポケットが6mm以上になり、歯の動揺度も大きく、歯茎からの出血も認められるような重症例では「歯周外科治療」が必要になります。
文字通り外科的な処置が主体となる治療で、最もポピュラーなのは「フラップ手術」です。
フラップ手術 : FOP
歯周ポケットが深くなると、通常のSRP(スケーリング ルートプレーニング)では歯石を除去できなくなります。
そこで有用なのがフラップ手術です。
歯茎をメスで切開し、歯根面を露出させた状態で歯石を除去します。処置が終わったら歯茎は縫合します。
垂直・水平性の骨欠損の治療法
歯周病の進行によって顎の骨が破壊された場合、欠損の状態によって治療法も変わってきます。
・垂直性の骨欠損
垂直性の骨欠損とは、歯が生えている方向に骨が溶けている状態です。GBRなどの「歯周組織再生療法」で対応することが可能です。
重症度が高いと抜歯が適応されます。
・水平性の骨欠損
顎の骨が水平的に溶けている状態では「歯周組織再生療法」の適応が難しいので、その他の歯周外科処置で対応することになります。
歯周内科の治療
歯周病を治すためには、歯周病を引き起こす細菌を除去すること薬を用いた歯周病の治療は「歯周内科」と呼ばれる治療法があります。
患者様の口の中に存在する歯周病菌を特定し、その歯周病菌に効果の高い薬を用いて原因菌に直接アプローチし殺菌していきます。
歯周内科の治療では最初の段階で抗菌剤などの内服薬が処方され、所定の期間その薬を服用します。
また、同時に抗菌作用のある歯磨剤や洗口液も併用します。
まとめ
このように、歯周ポケットの深さによって歯周病の治療方法は変わってきます。
当然ですが、歯周ポケットが浅い段階で治療を始めれば予後も良くなりますので、歯茎に少しでも違和感が生じたら当院までご連絡ください。
まずは精密に検査いたします。
大阪市 阿倍野区 西田辺えがしら歯科
歯科医師 院長 江頭伸行